特別復刻「でんしゃがはしる」

でんしゃがはしる | 山本忠敬

「でんしゃがはしる」は、山本忠敬さんが手がけた乗り物絵本の1つです。東京中心を約1時間かけて一周する「山手線」を主人公に、別の線や私鉄が並走したり交差したりしながら構成される15の場面のお話です。

大人が見ても楽しい、子供がみてももちろん楽しい

大人が見ても楽しいし、子供がみてももちろん楽しいです。
1978年の作品だそうですが、ノンフィクション仕立てであったために電車に関する絵やキャプションの誤りについて指摘が多く、再刊が保留になり、長い間お蔵入りになってしまった。けれど、刊行から40年以上経ってもファンからの復刊希望が絶えず、2016年に復刊した絵本だそうです。

眺めていると、東京駅に1度しか行った事がない、あるいは一度も行った事がない子供でも、この本をみていると、駅や電車の光景をありありと体験できると思いました。

絵本の最後のページをみると、各鉄道会社の協力名がずらりとならんでいます。

子供の絵本だけれど、手加減していないこと、大人が知恵をだしあい、1冊の本ができるまで最善の努力をしている気概を感じます。

乗り物好きのこどもたちが、38年たっても忘れられなかったというお話にも納得がゆきました。
もちろん、現代の電車好きの子供も、心から喜んでいました。

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正確できれいな絵

絵でしか表現できない楽しさにあふれています。私は電車に対して全く興味はないのですが、それでも非常にユニークだと感じました。

絵が正確で上品です。数多くある電車絵本のなかでも、比類のない絵本だと感じました。
製図を書いているような人が、レベルを落とさないで、子供にわかりやすく伝えているような印象です。絵本を見ていると、職人さんや技術者の、まじめなのにユニーク、ジャンクなところが1つもないのに楽しいお話をきくような気分になります。

一種の渡り鳥

この絵本を見ていると、以前、wataridoriという映画を観たことを思い出しました。内容は、「鳥たちが繁殖のために北を目指し、帰ってくる」というだけのものでした。派手さはないけれど、味わい深い作品でした。

日本人が動物のドキュメンタリーを撮るとどうも、変に擬人化しすぎる気がするのですが、その映画は、スケールが大きいのに、動物をそのままを見せてくれるような、それでいて、鳥たちの豊かな表情や、意外な行動を感じることができる映画でした。

この絵本は何か、そういうところが似ている気がしました。

「安全に運行し、ぴたりと同じ位置に戻ってくる」
よく考えたら電車じたい、どこか渡り鳥と似た性質をもっていたからかもしれません。

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