5歳の男の子は何を喜ぶ?

前回 からの続きです。どうも「じめんのうえとじめんのした」に、手応えを感じられなかった。そして私はその本を、とても素晴らしいと思っていたので、それをきっかけに、絵本をきらいにならないで欲しかった。
そんな背景をもちつつ、今回は、「楽しさ、親しみやすさ」に目を向けて、絵本を選びました。
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楽しいお話はどれ?

レオ・レオニ

フレデリック、じぶんだけのいろ、スイミー、アレクサンダとぜんまいねずみ、マシューのゆめ、全てレオ・レオニ

とっさに、その名前が浮かびました。教科書でもみた、あの赤い魚のお話です。

図書館で代表作をまとめて借りたところ、意外なことに、今回の場合は少し違うような気がしました。

もちろん、この上なく素晴らしいのですが、あらためて「甥くんが楽しいか?」という点で読むと、どうも違うのです。おそらく、「自分とは何か」というアイデンティティについて、焦点が当たりすぎている気がしたからでした。

5歳というのはまだ欲張りで、自分にとって楽しい事だけを大切にできる年齢です。
そして、そういう状態の人間は、今を全開で生きられています。
だからまだ、「自分とは何か」について絵本で提示されても、胸に響かないのではないか、と思ったのです。
あまりにもいちどきに読んでしまい、そのように感じたのかもしれませんが、5歳よりも、大人向けの本だと感じました。
叔母である私としては、もう少したんぽぽ感が欲しい。
グラフィックデザイナーが書いた本、と言う感じもしました。

余談ですが、エリックカール(はらぺこあおむし)の才能を見出したのも彼だそうです。

何でもありは、何でもいいとは違う

私がいまの時点で求めているのは、楽しい、無条件に楽しいお話です。それでありさえすれば、本当になんでもいいのです。
けれど、何でもありは何でもいいと違う。そのために、見つける事が難しい。

それならば、昔噺

みんなから読まれ続けている昔話の「ももたろう」はどうでしょう。赤羽末吉さんの絵が、ずしんときまっています。

けれど、大人になってあらためて読むと、(鬼って、そこまでされるほどの事、何したのかな?)と、余計な事が気になりました。
さらに、甥くんのご両親の考えとして【戦隊モノは控えている】という言葉も思い出されました。

さらに冷静な気持ちで読むと「武勇により鬼たちを制圧。巨万の財宝を収奪して故国に凱旋」は、戦隊モノ以上の世界です。「黍団子1個で動物に忠誠を誓わせる」点も、何かが気になります。

そうして、(いまのところ、すすんでみせるものでもないかな)という判断に至りました。

でも、この絵本は、絵も文章も本当にきれいで、これ以上を希うことは不可能な、工芸品のような絵本だと思います。
そのため、1作で判断せずに、絵の赤羽末吉さん、文の松井直さんの別の作品や本を、色々な側面から知っていこうとすることは、すごく豊かな事なのではないかなと感じました。

「ねないこ だれだ」

人気の絵本、「ねないこ だれだ」も、やや受け入れ難かった。
極端かもしれませんが、ちゃんと眠る子≒大人のいう事をきく子がいい子、みたいな、条件付きの愛のようなものを感じました。そのことをざっくりいうと、睡眠は明日への活力と伝えたいなら、こんな黒い世界にしなくてもいいではないか、みたいな気分です。

小学校に上がるまでは、「いい子でなくても、何かができなくても、あなたのことが大切だよ」が良いように思う私からすると、どうも、たんぽぽばなしも頭によぎりました。

甥くんはというと。絵本を手に取りはしたのですが、眺めてみてなんとなく嫌な顔をしていました。
子供なりに、むかっとしたのかもしれません。

安心して読めること

そんな経緯があり、私なりに、楽しい絵本とは何かというと安心して、リラックスして読めるという要素が大きいように感じました。

同時に、絵本の読み聞かせは、ぶっつけ本番が有り得ないのだと思いました。
ある年齢までは、大人が先に目を通してあげる必要がある。その一方で、検閲しすぎる感じや、おしつけのないようにすることも必要だと思いました。

そうすると自然と、「数冊の本をまとめて子供の前に置き、その中から望めば一緒に読む」というスタイル流れつきました。

図書館から借りられるのは私の場合10冊ですが、5歳の子供の集中力を考えると、1回に5冊くらいがちょうどいいようにも思います。そこから、全部読んでもいいし、読まなくてもいい、と言った感じです。

大人の言い分でいくと、せっかっく借りたのだから無駄なくエンジョイして欲しいところでもあるのすが、でも結局のところ、好きなものしか響かないのだと思います。無理強いしても、徒労に終わると思います。

今日の横綱 |「カンカンカン でんしゃがくるよ」「バムとケロの寒い朝」


「カンカンカン でんしゃがくるよ」

踏切が大好きなお子さんに、本当におすすめだと感じました。電車ではなく、ふみきりそのものにスポットライトがあたっています

ふみきりの1日が、複雑すぎる事なく楽しめます。登場するメンバーも、変にキャラクター化しすぎる事もなく、絵本特有の温かさが感じられる一冊です。

小ぶりの本なので、小さなお子様でも負担なく手に取れると思います。お話が楽しくなってくると、ゆっくり自分で文章を読み上げた事も印象的でした。

電車好きのお子さんなら、プレゼントにも最適かもしれません。

「バムとケロの寒い朝」

こちらも、大変喜んでいました。物語の楽しさ、ユニークな個性、発想のめずらしさ、そうしたいろいろがかけあわさって、絵本に凝縮されている感じがしました。

一見、情報が多すぎるかな?とも感じたのですが、大人が一緒に読めるなら、かえってちょうど良いようにも感じました。

また、今回は、以前のような速さでページをめくらなくなりました。絵を静かにじっとみて、そこから何かを感じている様子もありました。

「この子は何て言っているの?」

一番印象的だったことは、急に質問が増えたことでした。

「この子はどうしてこうなってしまったの?」「洋服はどうしてやぶれてしまったの?」「この子はどんな気持ちなの?」などです。

といいますのは、動物やいきものが主人公の絵本なので、明確なセリフがない中、表情をとおしてお話が進む場面もあったからです。
(だいたい、こうだろうな)と、子供ながらに想像して読んでいて、でも確証はない。
そういう時に、私に質問をしている印象でした。

私も、「前のページをもういちどみて、確かめてみようか。星をみていたからかもしれないね。」「かいちゃんの方が体が大きいから、引っ張ってやぶいてしまったのだね。」「わからないけれど、気持ち良さそうにしているね。そう思わない?」などと話しました。
また、そうした会話自体も、楽しんでくれている様子でした。

目標達成!

その後、でんしゃがくるよもけろちゃんも、何回か繰り返して「読みたい」と言ってくれました。
私は早々に、前回決めた目標を達成できました。

次回はもう少し、「楽しい、心から笑う」何かそういう絵本が見つけられたらいいと感じました。

■今回の10冊

上段左から
マシューのゆめ | レオ・レオニ(著) , 谷川俊太郎(訳)
アレクサンダとぜんまいねずみ | レオ・レオニ(著) , 谷川俊太郎(訳)
スイミー | レオ・レオニ(著) , 谷川俊太郎(訳)
フレデリック | レオ・レオニ(著) , 谷川俊太郎(訳)
どんなかんじかなぁ | 中山千夏(著) ,和田誠(訳)
ねないこだれだ |せなけいこ
ももたろう|文:松井直 画:赤羽末吉
じぶんだけのいろ | レオ・レオニ(著) , 谷川俊太郎(訳)
カンカンカンでんしゃがくるよ |文・絵: 津田光郎
バムとケロのさむいあさ |島田ゆか